2014/10/29
中華そば すずらん@恵比寿 「中華麺」
あの渋谷「すずらん」が恵比寿に移転したとか。私にとって、そもそも「渋谷」自体が長年敢えて立ち入らなかった街である上、開店からしばらくは渋谷でも有名な行列店でしたので、二重の意味で縁遠いお店でした。しかし、移転後は比較的入りやすいとの情報、さっそく、イソイソ潜入しました。
小料理屋のような粋な店構え、店内も非常に高級感漂う内装で、カウンターも重厚な天然木(写真は下掲)。厨房の店員さんも、ビシッと料理人用コックコートを着こなして、私語もなく黙々と腕を振るう静かな雰囲気。店奥では、ご主人が腕を組んで椅子に腰かけ、じっと厨房を見守っています。高級感漂うお店だけに、メニューも高級感が溢れまくり。とりあえず「中華麺」(950円)を注文しますと、つけ麺かラーメンを選べるようで、まずはラーメンでお願いしました。
驚くほど広浅の丼、そのせいか表面を覆う透明油層がかなり厚く感じられる、非常に特徴ある丼姿。白髪ネギの下では、ビシッと揃えられた細麺が、油でキラキラと輝いて……見るからに美味そう。
まずは、スープを一口……もちろん美味いんですが、なんか噂に聞いていた渋谷時代の味とは違う気が。ベースは噂通りで、ゲンコツの硬派なコクを主体に鶏の柔らかな旨味が絡む、上質な清湯。しかし、特筆はなんといっても「生姜」で、生姜湯もビックリの「高濃度」。これがダイレクトに舌に触れるとケバケバな味になってしまうところを、タップリのラードでトガリを丸め、さらに甘めのタレで和らげて……まさに生姜湯の親しみやすさをそのままラーメンに持ち込んだような、そんなお味。
麺は中細ストレート。麺箱には「龍製麺」とありましたが、昔と同様自家製だとか。低加水の麺を固めにゆで上げ、小麦の甘みをグイグイ押し出す感じの味わいで、コイツは美味い。ススり心地、ノド越しも文句なく、生姜のキレとも相まって、夢中でガンガンすすっておりますと……ワイシャツにスープを数滴散らしてしまいました。ラーメンを食べ慣れた私にしては珍しいこと、そのぐらい「官能的」な麺ですな。
具材は、チャーシュー、メンマに、ネギが三種。注目はこのメンマで、非常に甘めに味つけゴマ油の香りをきかせた、個性的な仕上がり。しかし、スープが生姜湯的な甘めのニュアンスですので、グッと甘めのこのメンマが、破綻なくシックリ馴染みながら、実に効果的な「ワンポイント」アクセントを加えます。
チャーシューは分厚い肩ロース、敢えてパサッとした食感に仕上げてありますが、スープが油分タップリですので、もちろんこれで正解。口の中で、スープを吸い込みながら重厚な味わいを噴出させるこの「呼吸」、そこへ例の「官能」麺が絡んでいって……コイツはもはや「パラダイス」。
すずらんの開業は2003年、私が本格的に食べ歩き始めた時期ですので、雑誌等でよく評判を見かけましたが、当時はゲンコツ・丸鶏と魚介系のWスープで端麗なお味だったとか。その後も、指をくわえてネット情報をワッチしておりましたが、いつからかラードが多くなったと聞き、いつからか生姜が少し効いていると聞き始め……そして、この一杯に至る訳ですな。技術と試行錯誤の積み重ねがあったからこそ実現した、独創的なバランス。「美味いが影が薄い」などと陰口をたたかれていた時代は、遠い昔になったようです。
店舗情報は、こちら。
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