2019/12/02
波と雲@東中野 「奥三河」

数カ月に一度は入る新宿方面のお仕事。この日は終日雨なので、駅近の宿題店が望ましい……実は天気予報から事前に検討してあり、東中野の新店「波と雲」へ。場所は、JR東中野駅東口の北側出口から10mほどで、徒歩数秒。

11月オープンのこのお店、雑居ビル地下1F(写真はビル入口)の居酒屋を、ランチタイムだけ間借りしたお店ですが、いきなり評判となってシャッター待ちが結構いるとか……この日は未明からの激しい雨のためか、12時前にスンナリ入れて先客3名のみ。

メニューは、「黒醤油」の「奥出雲」と、白醤油の「奥三河」(各850円)。「10層天然だし」がウリのお店ですが、食材は魚介が中心のようですので、その味わいがハッキリしそうな白醤油仕上げの「奥三河」で。「10層」のうち8種類の食材が卓上に展示してあるほか、「食前茶」として「マルベリー、ローズマリー、フェンネル、カルダモン」によるハーブティーが勧められます。もちろんお願いしましたが、コイツがなかなか優れたフレーバーで、ご主人の「センス」に高まる期待。

ひと目で、「商売度外視のアート系」とわかる、なんとも美しい丼景色。まずは、スープをひと口……お、意外に動物系が強い。卓上に置かれた8種の食材は、黒背煮干に厚削りの鰹節とその他節系、昆布とドライトマトに、干し海老や干し椎茸といったラインナップ。これに動物系の鶏・豚を加えたのが「10層天然だし」で、「食材ごとにうま味成分がことなるため、5つの寸胴を使い、各寸胴ごとに3種類以上の食材を入れ」「30時間かけてうま味の相乗効果を引き出し」たとか……つまり、グルタミン酸系(昆布・トマトなど)、イノシン酸系(煮干・節系・干し海老など)とグアニル酸系(干し椎茸など)に、さらに動物系(鶏・豚)などで寸胴を分け、その日の条件で最大のシナジーを生み出す配合でブレンドしている、ということですかな……おそるべき「コダワリ」ですな。
動物系はスッキリとした味わいに仕上げてありますが、それでも適度に脂をまとったフックラとした味わいが、全体を包むようなバランス感。お客さんとご主人のお話に耳を傾けると、魚介系と動物系は「半々」くらいのバランスとか。私のバカ舌では、動物系以外の食材による旨味シナジーが大変なことになっている気がしましたので、動物系による「丸さ」演出は、もう少し控えてもいいような……
麺は、やや細めの中太ストレート。プックラとした口あたりのゆで上がりで、結構ビビッドな食感、それゆえスープのスタイルに対してやや主張が強い感じ。甘みも見た目よりも結構強く、こちらはスープが放つ強烈な旨味を、シッカリと受け止めながら、両者が絶妙にシナジー……しかし、まだ改善の余地がありそうな麺ですな。
具材はシンプルで、チャーシュー、メンマと薬味のネギ。チャーシューは、脂身を取り除いた豚肉に、ハーブを絡めて低温調理した感じ。「食前茶」で見せたハーブへのコダワリがここでも炸裂、単体としても実に尖った美味さがあって、このラーメンだけでなくサラダやイタリアン・フレンチにも合いそうで、これなら単品でコンビニやスーパーでも人気が出そう。一方、メンマはオーソドクスな「材木」タイプですが、醤油による味付けが絶妙で、ベースが白醤油だからこそ、実に引き立つ。

なんとなく、「未完の大器」的な印象の一杯。私も以前は、グルタミン酸系、イノシン酸系、グアニル酸系で出汁を取り、それぞれをブレンドしてシナジーを「実験」したりしていましたが……上手くいく時は、信じられないほどのアゲアゲ効果。その片鱗はシッカリと感じられますが、それをなぜ、動物系と「並立」させようと思うのかしら。万人受けを考えれば、そこは「商売」として仕方ないのかしら……「趣味」と「商売」の間の「トワイライトゾーン」、そんな不思議な空間から、大きな可能性がささやきかけてくるような一杯でした。
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