2023/09/10
弘前煮干し中華そばスタンド ニボる?@新宿 「こいくち中華そば」

数ヶ月に一度、新宿方面の仕事が入りますが、これが諸事情により9カ月も間が空いてしまいまして……暑さに加えて宿題店がたまりすぎて、思考停止状態な上に、午後イチで三茶に戻る必要もあり、新宿南口のマインズタワーB1にできた新店に直行。

7月オープンのこのお店、資本系のお店ですが、「富士そば」のようなフル・セルフのシステムでカウンターのみ、回転率重視なところがまた資本系的。ネット情報では弘前系の煮干し中華に触発されて立ち上げたお店とか。店内掲示に従って、券売機に向かう前に席を確保し、ついでにカウンターの能書きを読んでみると……これは見覚えのある食材構成。煮干は平子煮干をベースに各地の煮干をブレンドしていたり、カエシは青森のワダカン醤油に香川のマルキン醤油を加えていたり、コメは青森の「まっしぐら」だったりと……これは昨年に東京ラーメンストリートに出店していた、青森「ひらこ屋」の食材構成に酷似してますな……

メニューは物量重視の攻勢で、「こいくち中華そば」か「あっさり中華そば」と「ミニタレカツ飯」のセットが券売機最前列、次が「ざる中華」と「煮干しまぜそば(ダイブ飯付き)」。ラーメン単体はないのかよく見ると、右下のほうに小さくボタンがありました。昨年「ひらこ屋」では「濃口煮干そば」をいただきましたので、比較のためこちらでも「こいくち中華そば 中」(990円)を、ポチッとな。
どうしても「ひらこ屋」と比較してしまいますので、スープ量とかチャーシューのボリュームとか、多少気になる丼景色。まずは、スープをひと口……おぉ、関東人が好む甘塩っぱさを抑えた「ハードボイルド」感は、いかにも青森。ベースにしている平子煮干しは、関東では主流の「黒背(青口)」「白口」など片口いわし系とは異なり、主に山陰や瀬戸内・北陸で獲れる真いわし系で、淡泊で大人しい味わい。これをベースとして、片口系やうるめ系、あるいは鰺系をどう加えてアグレッシブにするかが勝負ですが……ベースのひらこ煮干しの大人しい味わいを中心に前面に出した、かなり淡泊で平坦な味わい。「ひらこ屋」では煮干構成でワイルド感やコクの凹凸を出しながら、ハードなカエシでまとめ上げていましたが……この平坦なベースに対しては、調味による甘みも塩味も控えめで、これでは醤油のコク感だけをプラスするハードなカエシは逆効果。後半は飽きが来るレベルですな。
麺は、家系に近い太さのストレート麺、「ひらこ屋」も切り歯16番で似たような太さでしたな。かん水を抑え、ツル・モチ感よりも「うどん」的な素朴な食べ応えを重視した設定もよく似ており、加水率も多少抑えて後半に向けスープを吸わせる戦略も同じですが……提供時にかなり柔わゆでな上、スープのメリハリやワイルド感も控えめなため、スープを吸っても変化はさほどでもありません。醤油のコクに引き締められた小麦の甘みが立ち上がる「ひらこ屋」とは、比べるべくもありませんな。
具材は、チャーシュー、メンマと薬味のネギ。チャーシューは極薄のバラ肉で、味付けもニュートラル。メンマも特に独自性はなく、ネギだけはカラミそのままのワイルドな一品。券売機の構成が、「チャーシュー丼」なしで「ミニタレカツ飯」推しなのも、なんとなくわかるクォリティですな。

「インスパイヤ」というのは、元ネタの偉大な革新から啓発を受け、そこに自分なりの感性を加えて、さらなる高みに持ち込もうという試みのこと。煮干しの主力も、カエシも麺も酷似していることから、どうしても「ひらこ屋」のインスパイヤになっているかという感想になってしまいますが……そう簡単に「インスパイヤ」できないほど、煮干の世界は奥深いということですな。広島育ちで瀬戸内の「いりこ」(真いわし系と雑魚)出汁しか知らなかった私が、千葉に住み関東・外洋系の片口いわし系「黒背(青口)」「白口」の表現力の強さを知った時の衝撃には、大きなものがありましたが……今度は逆に、関東の方々に山陰・真いわし系の「平子煮干し」がどこまで衝撃を与えられるか、新宿の若きリーマンの「感性」に注目しています。
店舗情報は、こちら。
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