2011/07/31
マルナカ@飯田橋 「チャーシューメン」

店内は、柱もカウンターも、年季の入った深い色の木彫で、壁のシックイの色合いも、「時代」を感じさせます。よくワザと内装を「昭和」チックにした店がありますが、「本物」には絶対にかなわない、この店を訪れれば分かります。

東京という街は不思議なところで、全国のラーメンが食べられるのに、「東京ラーメン」を食べさせる店は実に少ない。そういう店があったとしても、全国から様々な味覚の持ち主が集まって住まい、流行り廃りに流される中で、古いスタイルは維持できないのでしょう。ずっと同じ街に住む人々が、昔のライフスタイルを頑なに守り続ける、そんな古くからのコミュニティーの中でのみ、「東京ラーメン」は脈々と受け継がれています。
スープは鶏ガラ、昆布主体で、スッキリとした旨み。醤油ダレは濃すぎず薄すぎず、飲むほどにフワッと鼻腔を満たす鶏の香りが、ウットリするほど愛おしい。麺は多少太めの中太ストレート、東京ラーメンというと縮れ麺という印象がありますが、ストレート麺も結構多い。ちょっと柔らかめのゆで加減で中加水のソフトな食感、多少スープを吸いながら、フックラとした甘みが上手く引き立ちます。
具材は、チャーシュー、メンマ、海苔にネギ。メンマは、これぞシナチクといったシャッキリとした歯応え、分厚く切り分けたチャーシューは5枚ほど、シッカリと味をしませ敢えてパッサリと仕上げており、スープ・麺といっしょに噛み込むほど、旨みがジワジワと口腔を満たします……まさに、至福のひと時。

この店は、私の憧れの一つ。しかし、敢えて頻繁には訪れないようにしています。なぜならこの味は、この街のコミュニティーによって守られているものだから。「お得意様」の期待にどこまでも応えるのが、日本の商売では古くからの基本。それを忠実に守り切る日本人の「真面目さ」が、地元の期待に応える「奇跡の味」を守っているのです。そんな「生態系」に育まれた貴重な味ですから、私のような外部からの「観察者」は、ごくたまにオコボレにあずかる程度に「節度」を持つべきかと……来年、店の暖簾が白く眩しく陽光を照り返すころ、「昭和の街」にまた来ます。
店舗情報は、こちら。
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