2017/01/22
MENSHO@護国寺 「潮らーめん」

私の場合、食べ歩きに時間制限を設けておりますので、自ずと行動範囲が限られるのですが、週末は有楽町線でいえば江戸川橋駅が限界。しかし、その一つ先の護国寺に、話題沸騰の店ができてしまい……堪え切れず訪店。こんなことは「ちゃぶ屋」以来で、お店もその「ちゃぶ屋」がかつてあった場所。

市ヶ谷「麺や庄の」の関連店、その中でももっとも「意識高い」系との評判で、もちろんノボリなどが立とうはずもありません。護国寺駅6番出口から、音羽の高級住宅街を左に見ながら通りを下り、右手に現れるご覧の袖看板と掲示をお見逃しなく。

メニューは、「潮らーめん」「醤油らーめん」「つけめん」「担々麺」の4系統ですが、券売機の様子から、「担々麺」はまだ未提供かも。どれも美味しそうですが、「薩摩天然温泉水使用」と、最も「意識高い」度合いが強そうな、筆頭メニュー「潮らーめん」(1,000円)をポチッとな。この日は店内待ち3名で、4番目の私は寒空のもと店外待機、しかし客席数が多いせいか客の回転はスムーズで、約6分で着席できました。
う~~む、もはや我々庶民は「ヘヘェ~~」とひれ伏すしかない、「意識高い」度MAXの丼景色。まずは、スープを一口……こいつはもう、「アート(芸術)」の世界ですな。動物系は使わず、宇和島産の真鯛と真昆布・帆立で仕立てたというピュアな出汁。「真昆布」(料亭・割烹で使われる最上級の昆布)と聞いただけで、私のような貧乏人はひれ伏すしかありませんが……旨味成分の異なる食材をコラボさせ、旨味のシナジーを狙っていますが、その狙いが極めてシャープに結実しており、まるで「日本刀」のような力強さとキレ味を兼ね備えた、おそるべき旨味。海水塩による塩ダレが、旨味のキレ味をさらに増します。
麺は、自家製の細麺ストレート。この店の「自家製」は製粉までを意味しており、店奥の工房で石臼挽きした粉3割と一流の内麦粉7割で「自家製麺」、いやはやその意識の高さには平伏するのみ。「自家製粉」部分は全粒粉なのか、内麦だけとは思えぬ甘みの力強さ。大地の恵みの豊かさを、スープがシャープに形造るようなコンビネーション、主従の役割も明確で、これぞ「アート」という強烈な印象、ひたすらひれ伏すしかありません。
具材はスープ内とスープ外に分かれており、スープ内は鶏のタタキにマグロのワンタン、ワカメの中芯に青菜、それに薬味のネギ。朝引きの鶏を昆布ジメしタタキにしたという一品は、フレッシュでウブな鶏の風味が、麺の豊かな風味と「順位相」で、「日本刀」のようなスープとは「逆位相」、その存在感が際立ちます。さらに、ネギのフレッシュな風味・食感にも目をみはりますが……ワンタンは茹でが足らずにくっ付いたまま、全体に極めてレベルの高い一杯だけに、コレは残念。

丼の縁にチョコンとのるのは、炭化させたネギをまぶした帆立のコンフィ。店員さんから口頭で説明を受けながら、「なんじゃそれは」と内心疑いつつも口にすると……シックな雰囲気の中から帆立がググッと立ち上がってくるような、際立った美味さ……「ヘヘェ~~」とひれ伏すしかありません。コンフィの周りに散りばめられたパウダーは、ご想像の通りカラスミで、その独特な風味・苦みで、「味のひっかかり」をつけようという趣向。

泣く子も黙る高級住宅街の「文京区音羽」、その一画で供される、このアーティスティックな「日本料理」を、もはや「ラーメン」として評してよいのやら……昔、天才的ジャズ・トランぺッターのサッチモ(ルイ・アームストロング)は、「アーティスト」と呼ばれることを嫌って、「俺はエンターテナーだ」とボヤいていたそうですが……普段から「ラーメン」を、「アート」ではなく「エンターテイメント」として楽しんでいる私には、あまりに「高尚」過ぎた一杯でした。
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