2018/10/30
肉処 にくのすけ@小伝馬町 「マー油豚骨」

またまた小伝馬町に新店とか。以前も書きましたが、この街は昔からラーメン専門店が少なく、できてもすぐ閉じてしまうという「不毛の地」。そこへ、この半年で「江戸紫」「かえもん」に続き3つ目の新店とは……どういう風の吹き回し? お店は小伝馬町三丁目交差点(写真)のカドにあります。

10月オープンのこのお店、開店祝いの花(写真左端)に記名がある通り、築地の懐石「若竹」の息子さんが手掛けたお店で、この方はかつて話題店「汐留らーめん」(閉店)の店主をされたり、八丁堀「竹井幸彦」を立ち上げられたりと実績豊富。夜は肉料理メインの居酒屋で、麺は夜昼食べられるというのも「竹井幸彦」と同じアプローチ、ランチメニューは「マー油豚骨」「豚骨」の2系統で、「牛かつ定食」など定食類も4種と充実。とりあえず、券売機筆頭の「マー油豚骨」(790円)を、ライス・替玉防止の「味玉」(100円)とともに、ポチッとな。
パッと見でマー油が判別できず、オーダーミスかと疑いましたが、丼に鼻を近づければ、なんとも芳しいマー油の香り。まずは、スープをひと口……どこかホッとするような、安定感のある味わい。ベースの豚骨は、豚の旨味の最大化させるため、完全乳化させないスタイル。それでいて、豚の臭みはキッチリ抑えてあります。コク重視の醤油ダレの効かせ方、博多・熊本というよりは、広島・山口的な仕上がりの茶濁スープ。これに絡むマー油ですが、ほとんど焦げ目をつけず仕上げたもの。香ばしさよりコクの分厚さをエンリッチするアプローチで、醤油ダレの方向性と表裏一体を成しており、その緻密な設計による安定感がハンパない。
麺は極細ストレートの、いわゆる博多麺。バリカタ程度のゆで加減で、ポリポリと軽快な歯切れが心地よく、低加水麺ゆえ甘みもなかなかの力強さ。シッカリと醤油ダレのきいたスープは塩分高め、それに麺の力強い甘みが、さらにギュッと引き締められる感じで、コイツはなかなかの食べ応えです。
具材は、チャーシュー、キクラゲに万能ネギ、そして追加の味玉。肩ロース・チャーシューは煮豚的な仕上がりで、味付けを抑えて肉本来の旨味を引き出すアプローチ、スープが濃いのでこの方が断然美味さが引き立ちます。キクラゲも麺に絡みやすく切り分けられており、コリコリ感も実に適度。
後半は、卓上の高菜で味変。辛味の一切ない、旨味と酸味を加える役回りで、卓上アイテムはこれだけですので、辛党の方にはやや不満が残るかも。ただ、マー油で一定の辛味はすでに加わっていますが……それよりも、スープの塩加減がただでさえ高めのところに、旨味が加わりさらに塩っぱさが増すあたりが、ランチとしてはどうかしら……夜飲みのシメとしてはOKでしょうが。

ラーメンのほかに定食類も充実させるアプローチに、最近目黒で出会いましたが、あちらは昭和の定食屋的な設定。考えてみれば、いつから「ラーメン専門店」なんていうジャンルができたんでしょうな……私が子供の頃、ラーメンは定食屋や中華料理屋で食べるもので、近所にあった広島「すずめ」も、ラーメンだけ食べたい人は窓口で受け取って、適当に店外の道端や川縁で食べ、おでんなんかで一杯やってからラーメン食べる人だけ、店内で食べるスタイルでした。時代も回り回って、「食」の中でラーメンのみ独立していけるのか、それともやはり、他のトラディショナルな「食」と共存したメニューとして生きるのか、その両方を試行してみる時代が始まったのかも知れません。
店舗情報は、こちら。
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