2020/05/22
RAMEN しじみ軒@神保町 「しじみ塩そば」

(まだ2月の頃のお話)
なにげに「人生の転機」的な日になった木曜日、でもこんな日だからこそ、穏やかにさりげなく過ごしたいと思ったりして。いつものように少し残業し、通い慣れた街・神保町にできた新店「しじみ軒」を目指して、いつものようにブラブラ。

2月オープンのこのお店、情報があまりありませんが、駅からもほど近く、信号のある交差点のカド地で白山通り沿い、外装・内装も新調されており、まず資本系とみるべきですな。メニュー(写真ピンボケでスミマセン)は「しじみ塩そば」と「中華そば」の2系統、「中華そば」は鶏豚魚介で「しじみ」は入らないようです。トッピングが変わっており、「伊勢わかめ」「紀州梅干」「三元豚焼豚」などブランドを強調、特に「藤森商店厳選高級海苔」は250円という驚きのプライシング。とりあえず、「しじみ塩そば」(800円)に好物の「伊勢わかめ」(150円)をつけて、ポチッとな。
重厚な色合いの丼のなかに、色鮮やかに盛り付けられた食材たち、かなりのコダワリを感じる丼景色。まずは、スープをひと口……慎重に調整された、完成度の高い味わい。一見、何処にでもありそうな塩スープですが、ベースの鶏清湯も表面的にはスッキリとさせながら、実は風味もシッカリしており、しじみ特有の旨味も、派手さを抑えながら着実にきかせています。名品と名高い宍道湖のしじみを使いながら、外連味を抑えて質実剛健に仕上げ、なおかつ「統制」の取れた味。話題になり売れてナンボの個人店では、なかなかできない「抑え」のきかせ方ですな。
そして、麺の合わせ方も質実剛健。この手の塩ラーメンにありがちな中細ストレートからは少し太め、「全粒焙煎粉を使用した自家製麺」だそうで、確かに香り高く派手めな甘味。ゆで加減も、この手だったらしなやかさ重視のところを、結構カタメに仕上げて重みのあるコシ。当然スープに対して麺が勝ち気味となりますが、鶏としじみの旨味、それに適度な塩加減が、麺の甘みにガンガン「煽り」を入れるスタイルで、こういうシナジーのさせ方もアリですな。

具材は、チャーシュー2種に、刻んだ三つ葉と乱切りのネギ、そして追加の「伊勢わかめ」。三元豚の低温調理チャーシューは、最近ではさほど珍しくないものですが、厚切りで噛み応えもあり肉の旨味も実に力強くて、コイツはなかなかの一級品。鶏ムネ肉も、世に多いパサパサのお飾りではなく、下味がしっかりつけられて食べ応え十分。注目は、追加した「伊勢わかめ」でしたが……量はご覧の通りタップリですが、これまで食べたワカメをウリにした一品に比べれば、実に大人しい風味。まぁ、非常にバランスに気を使っている一杯ですし、こういう設定になるのかしら。

小津安二郎の映画のような、「統制された美」を感じさせる一杯。個人営業店の多いラーメン業界では、目立ってナンボ、強烈な個性が話題になってナンボで、いきおいヘビメタ的な作品が多くなりますが……俳優も小道具も「本物」を使い、計算し尽くした構図の中にはめ込んで、計算通りに演じさせる。完璧さを求めるほど、表現が穏やかに、淡々としてくる……むしろ余裕のある資本系のお店にしかできない、「いぶし銀」の世界なのかも。この日の客入りは、私を含めて数人程度、おそらく現代に小津のような映画を作って封切っても、映画館はガラガラなんでしょうな……それは商売としての優劣ではあっても、作品の優劣とは無縁でしょう。
店舗情報は、こちら。
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