2021/10/12
油そば商店 油坊主@三軒茶屋 「トマト」

まだ秋分ではありませんが、メッキリ日が短くなった今日この頃。相変わらず解除されない緊急事態宣言と時短営業のせいで、外食は早めに済ませる必要がありますが……そういえば、最近「油そば」を食べてませんな。三軒茶屋の名店「油坊主」へ。

私は5年ぶりの訪店ですが、もちろんオープンはもっと古く2009年とか。玉川通り沿いとはいえ、三茶の駅から少し距離があり人通りもさほど多くなく、しかも隣が「和正」(2008年オープン)という行列店という条件で、12年も続いているというだけで、実力のほどが分かります。
麺メニューはすべて油そばで、「汁なし担々」「しょうゆ」「しお」「トマト」というラインナップ。この店の名物は「しお」で、味は「貝類昆布塩だし×鶏白湯」と書いてありますが、そのユニークかつ絶品な味わいに、のけぞったのが5年前。その時から、「貝類昆布塩だし×牛だし×トマト」という、「しお」以上に想像が難しいメニューに興味津々でした。ともかくも、「トマト並盛」(700円)をポチッとな。
海苔にチーズの雪が降るという、初見から他の追従を許さないユニークな丼景色。麺をどけてタレを見てみると、これがトマト色のサラリとしたモノ。これで油そばなのかしら……全く想像ができないまま、シッカリ全体を混ぜ込みます。
混ぜ後の姿はイタリアンっぽく、サラサラのソースでもチーズのおかげで、タレが麺にガッツリ絡みます。コイツをガバッと持ち上げ、ジュルリとイキますと……いやぁ、イタリアンでも和風でもない、唯一無二のユニークな味。まず驚くのはその旨味の強さで、アサリ的な貝類の旨味(コハク酸系)に、トマトとチーズや海苔の強烈な旨味(グルタミン酸系)がシナジーし、そこへ牛骨的なスープのイノシン酸がトリプルでシナジーしてくるという、恐るべき三位一体攻撃。風味としても、牛にトマトやチーズが合うのは当たり前としても、アサリ出汁がこんなに合うとは目からウロコ。いやぁ、目を見張るほどユニークな美味さ。
具材は、チャーシューと、刻みタマネギ・海苔・ネギに、チーズがタップリ。メニュー上は「チャーシュー」ですが、仕上がり的には「角煮」に近く、これがイタリアンっぽいこの一品に馴染むと、なんとなく「ベーコン」っぽくも感じるという面白さ。噛むほどに、「三位一体攻撃」のイノシン酸が補給され、グイグイと美味くなっていくという面白さ。味変アイテムも多数用意されており、「トマト」についてお店のオススメは胡椒や辣油だそうですが、いずれもバッチリ合いますし、ちょっとニンニクを入れてみても面白い。
付け合わせでスープが提供され、前回はあまり気にしていませんでしたが……あっ、これって牛骨ですな。そうか、能書きで「トマト」だけに唐突に出てくる「牛だし」というのは、このことなのか……あまりの「本気度」に、しばし絶句。「しお」の鶏白湯といい、「トマト」の牛骨といい、これほど本気で味のバリエーションを展開する油そば専門店は、ちょっとないんじゃなかろうか。

なぜこの店が、こんな不利なロケーションで12年も続いているか、深く納得できる珠玉の一杯。しかも5年前から少し値上げしたとはいえ、1,000円越えのラーメンも珍しくなくなったこのご時世に、大盛でも700円とはなかなかのプライシング。それに、レギュラー・メニューでは使っていないトッピング、例えば「キムチ」「明太子」「ほうれん草」「ベビースター」なんかも提供されているところが、今となっては貴重ですな……油そば専門店が次々と世に出てきた頃には当たり前でしたが、いまや「絶滅危惧種」。あぁ、まだ「汁なし担々」と「しょうゆ」が未食という幸福感。でも次は久々にまた、「しお」かしら。
店舗情報は、こちら。
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