2022/08/29
麺堂にしき@小川町・神保町 「醤油らぁ麺」

食べ歩きとしてはあまり行くあてのない週末でしたが、雨でもないのにこの時期にしては気温も低く、曇りで日差しもなくて絶好のウォーキング日和。小川町あたりで食べ忘れた宿題店がなかったかとネットを検索しますと……「麺堂にしき」が未食であることを思い出しました。

2020年3月オープンのこのお店、ちょうどこのころ人生の分かれ道に差し掛かり、食べ歩きも月1杯程度までペースダウンした時期で、主力の「鴨醤油」は他に名品も多いことから後回しになっておりました。しかも、昨年秋から半年休業、今年3月にメニューを一新して営業再開、2021年3月にオープンした歌舞伎町店(2号店)とは別の道を歩き始めました。

一新されたメニューは、「醤油」「塩」「地鶏白湯」の各ラーメンと、スタッフの態勢が整うまでは夜提供のみの「鰹昆布だし醤油つけ麺」。ベーススープは鴨から丸鶏に変わったということで、それならまずは醤油ということで、「醤油らぁ麺」(950円)をポチッとな。厨房はご主人といかにも不慣れそうな店員さんの2名体制、店員さんに食券を渡すと、大陸系の日本語で麺が手揉みか細麺から選べるとのこと。質問するのは酷だと思いつつ、オススメを聞くと予想通り店員さんがフリーズ、ご主人から「醤油なら細麺がオススメ」との助け舟が出ました。
分厚い油層が深い醤油色のスープを覆い、その表面にはネギが一切見当たらない、本気モードの丸鶏系。まずは、スープをひと口……おぉ、コイツはハンパなく「フルボディ」。名古屋コーチン、比内地鶏、黒さつま鶏「黒王」を、水出しした昆布水で炊き上げた丸鶏スープ。レンゲで掬っても油層とスープが分離しないところを見ると、炊き上げながら分離した鶏油を都度適量取り除いて仕上げるという、「69’N’ROLL ONE」的な手間のかかったスープと見ますな。当然、口腔に広がる鶏の風味は「奔放」な豊かさ、コイツを重厚な風味の醤油ダレで力強く全体を「グリップ」して、派手過ぎず重過ぎず、見事なバランスに仕上げています。
麺は、三河屋製麺製の細麺ストレート。低加水で本来はスープの吸いがよいはずですが、スープにタップリと含まれた鶏油のせいか過度に醤油ダレを吸い込まず、イイ感じで小麦の甘みがギュッと引き立てられています。ある程度外麦もつかっているのか、小麦の味わいに重みがある上、たまり醤油も使う醤油ダレでさらに「重量感」が加わって、いやコイツは相当に美味い。丸鶏醤油に低加水細麺は定番の組み合わせですが、これほどのコンビネーションと表現力は、出会ったことがありませんな。
具材もまた、結構すごい。チャーシューは、スペイン産ガリシア栗豚を炭火で吊るし焼きにしたという超本格派。赤みを帯びた表面(周囲)部分がその証ですが、内部にも赤みがあるということは、吊るし焼きながらも低温で仕上げているということなのかしら……豚肉本来の旨味が吊るし焼きで見事に引き立てられて、それを包み込むのが地鶏スープだからこそ、その味わいがさらに引き立ちます。いやぁ、コイツは美味い。メンマも、穂先をジックリと醤油ダレでコク味付けたモノ、具材だけでもこんな高度なレベルの品が、小川町の路地裏で提供されているとは、まさに脅威。

驚異的なクォリティが度肝を抜く、真の名店。それがなぜ私の中からも忘れられた存在になったかというと……ひとつは場所で、靖国通りから路地へ曲がり、さらに路地に入ったところで、最初に偵察した時は存在に気付かなかったこと。もう一つは休業とメニュー変更で、休業前の「鴨醤油」は、ネギが浮くフツーの鴨系にしか見えなかったこと。まぁ、「69’N’ROLL ONE」的な地鶏系は数々生まれましたが、その中でもこの一杯は貴重な「本物」。機会がありましたら、是非。
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