2022/11/26
中華そば ひらこ屋@東京 「濃口煮干そば」

全国のご当地・有名ラーメン店が期間限定で出店する、東京ラーメンストリートの名物企画「ご当地ラーメンチャレンジ」。いつも大行列を巻き起こしているのを、行列嫌いの私はいつも遠巻きに見ておりましたが……第3弾の佐野ラーメン「ようすけ」は我慢しきれず並んでみたら、意外に早く入店できたことに気をよくして、今回は第5弾の青森「ひらこ屋」に挑戦。掲示は「25分」待ちですが、12分ほどで入れました。

「ひらこ屋」は2005年に青森県青森市で創業、煮干し一筋のお店として噂はかねがね聞き及ぶものの、こちらはなにせ東京都心のみが活動範囲、デパートの催事やこういう企画でしかお会いすることはできません。メニューは「濃口煮干そば」と「あっさり煮干そば」の2系統、この店はチャーシューのバリエーションが意外に深いと聞いており、それが4種も入るという「濃口特製」がかなり気になりましたが……まずは基本の「濃口煮干そば」(950円)をポチッとな。
スープ表面にキラキラ輝く煮干しの銀鱗が、超激ハードなドラマを予感させますが、リボンのように結ばれたメンマが、そんな緊張感をほぐすアクセント。まずは、スープをひと口……プロだけがなしうる、統制された「ハードボイルド」。まずハッとさせられるのが甘みが全くないこと。煎餅その他、東京人は甘塩っぱい味が大好きで、煮干しラーメンにも甘い調味を望みますが、ハードでビターな濃厚煮干しに対して、甘さは皆無のツンデレ系。
さらに驚くのは、カエシで敢えて加えていると思われる微妙な「酸味」。従来の濃厚煮干し系では、セメント系など煮干しの風味をワイルドに打ち出すだけの「やりっぱなし」感がありましたが……それを酸味でグッと引き締めて、「ワイルド」にとどまらない、目指す方向を「統制(コントロール)」しようという、明白な意志が感じられます。コイツは凄い。

麺は、切り歯16番ですから太麺といってよいストレート。かん水を抑え、加水率もある程度抑えた独特のアプローチ、ゴワッとした口あたりに、モスッとした歯応えで、その無口な純朴さが津軽煮干しスープにそれなりに合いますが……序盤はちょっと、ギコチなさを感じるのもまた事実。しかし、麺ゆでを抑えた効果か、後半に向けてご覧のように麺がスープを吸って……甘さの欠如したスープの味空間に、小麦の甘さがグイグイ自己主張を始めだすと、いよいよこの一杯のクライマックス。
具材は、チャーシュー、メンマ、チャーシュー2種と、薬味のネギ。白眉はチャーシューで、同じモモ肉ながら部位も調味も切り方も変えた2種を添えるという、凝った構成。デフォの「濃口煮干し」に入るのは、よくあるモモ部位をジックリと味付けた厚切りタイプと、部位を変えた薄切りタイプ。厚切りタイプはトラディショナルな美味さと食べ応え、薄切りタイプは同じモモ肉でも、「しんたま」か「すね」と呼ばれる部位のようで、しかも少し低温調理系の処理で素材の味わいが活きており、コイツがなかなかの食べ応え。

食材等の解説は、ご覧の能書きを見ていただくとして省略します。個人的に、この一杯からの最大の学びは、煮干しであっても、調味料的な「甘さ」から「解放可能」であるという事実。人生を振り返っても、広島、関西、関東と、概ね「甘さ」的な調味が絡むラーメンの世界に生きてきましたが……それがなくても成立する、津軽ラーメンの奥深さ。あと数年でリタイアしたら、是非現地・津軽でいただきたいと思います。
店舗情報は、こちら。
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