2023/07/16
麺屋 五常 ウィング新橋店@新橋 「濃厚魚介豚骨つけ麺」

またしても土曜狙い撃ちで激しい風雨。都心部地下のウォーキングコースもそろそろネタ切れですが……久々に、汐留・新橋間を何往復化してみることに。腹ごしらえは、新橋駅東口の地下街「新橋ウィング」の「麺屋 五常」で。

「石月」「石楽」など蕎麦の分野を中心に、手広く飲食ブランドを展開する会社が運営元、この「五常」も一度2021年春に新橋や新宿、大阪など立て続けに展開が始まりましたが、なぜか比較的短期にほとんど撤収。2022年にあらためて再展開を開始して、新橋ウィング店オープンは1月オープン。店頭の能書きを読むと、再展開へ向けて麺や味を作り直した気配がありますな。

メニューは「濃厚魚介豚骨つけ麺」とその「辛」バージョンの2系統、さらに麺を「胚芽麺」か「もちもち麺」から選べます。とりあえず、「濃厚魚介豚骨つけ麺」(1,100円)の並盛りを胚芽麺で、ポチッとな。デフォで1,100円とは時代を感じさせるプライスですが、大盛りも同料金で、特盛りにしても50円増しと、食いしん坊には良心的。麺ゆでに11分かかると店内掲示がありますが、食券を渡して約7分ほどで丼到着。
蕎麦のような麺肌の色合いと、いかにもドロ系っぽいつけ汁表面が印象的。まずはつけ汁をひと口……いわゆる豚骨魚介の「またおま」系的なファーストタッチですが、味は資本系とは思えないほど、かなりユニーク。動物系は、豚骨・豚頭・豚足などに鶏ガラ・モミジを合わせたコラーゲン重視のシフトで超濃厚。これに対して魚介系は、煮干しはアジ干しをメインにガツンと効かせ、イワシ系の煮干しで下支えしておいて、仕上げにサンマ干しをガツンと加えるという……苦みを帯びたソリッドステートな風味・旨味が、濃厚な動物系の中からグイグイと立ち上がってくるような、往年の「麺屋武蔵」を彷彿とさせる力強さ。
麺は、菅野製麺と共同開発したという特注の「胚芽」麺。ただの全粒粉・低加水麺とはひと味違う、朴訥とした力強い甘味・風味が印象的で、そのままでもスナック感覚でスルスルと食べ進められたり。コイツをつけ汁につけ、ズバァ~~ッとイキますと……完全に麺をくぐらせると、濃厚なつけ汁が勝ち気味ですが、両者のバランスを取りながら頬張りますと、チョイと他では食べられないほどの「口福」感。特に胚芽の力強い甘味と、魚介豚骨のソリッドな旨味が織りなすハーモニーには、資本系とは思えない、突き抜けたカタルシスがありますな。コイツは美味い。
具材は、チャーシュー、メンマ、ネギ2種と柚子。バラ肉チャーシューは、やや低温調理気味に仕上げて、提供前にバーナーで炙りを入れるという面白い手法。炙りで豚の風味が際立って、麺・つけ汁が織りなすユニークなコラボに、実に印象的なアクセントを加えます。メンマも、ゴマ油の風味を強調したユニークな一品で、コイツも実に面白いアクセント。
カウンター上にポットで提供されている割りスープ。味は薄めの煮干し出汁だと思いましたが、コイツで割って濃厚感を下げて初めて、多めに入った柚子の風味が活きてくるという趣向。さすが資本系、最初から最後まで、手を抜かず実に緻密に考えられた構成ですな。

2021年に展開を始めたときには評判もイマイチで、私も1回フラれたままリベンジもせず、2022年に再展開を始めた時も、あまり食指が伸びませんでしたが……それが大きな判断ミスだったと、シミジミ思い知った一杯。1990年代の終わり頃、「麺屋武蔵」が秋刀魚干しで話題をさらい、その流れで2000年代前半の魚粉系豚骨魚介ブームが形成されていきましたが、派生としてのアジ干しアレンジは、風味のクセが強いため、多く試みられたものの成功作は少数でした……あれから20年、当時成し遂げられなかった「正解」のひとつが、目の前にあったり。これだから食べ歩きは止められない、積年の課題に対する偉大なるチャレンジに、拍手。
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