2011/12/31
麺処 吉村家@小川町 「わかめ煮干し中華そば」

今年もあとわずか――年末に休みがとれるのは4年ぶり、ちょっと今年を振り返る余裕も出てきましたが……多くの方と同様、私もあの震災が忘れられません。個人的にはそれまでの2年半、正月を削ってまで心血を注ぎ、仕込んできた仕事がありまして、それを世に出す直前に起こった、あの震災。夢見た「明日」が、ガラガラと音を立てて崩れた瞬間でした……被災地の方の苦しみに比べれば、些細な出来事ではありますが。そんなことを思ううち、小川町「吉村家」を思い出しました。

8月に訪れた際、ワカメの美味しさに瞠目、聞けば少しでも被災地支援になればとのご主人の気持ちから、大船渡産を使用しているとのことでした。そのワカメをタップリ使用した「わかめ煮干し中華そば」(800円)はまだ未食、被災地に思いを馳せつつ今年を振り返る一杯に最適ですな……「味付玉子」(100円)と一緒に注文。
煮干し風味がグッと引き立ったこのスープ、煮干しは九十九里産だそうですが、「青口」(*)特有の骨太な味わいが印象的。動物系は鶏ガラ主体、醤油ダレのコクと上手くバランスしていますが、全体的に塩加減が強め。前回食した際は、煮干し・鶏ガラ・醤油のいずれも突出させないバランスでしたが、煮干しをグンと押し出した関係か、あるいは大量に使うワカメの関係か、バランスをいじったシワ寄せが、最終的に塩分に響いているようです。

麺は、浅草開化楼製の中太縮れ。実に庶民的な風味の一品で、気取ったところのない素直な甘みが、素朴な煮干し風味によく合います。万人向けのソフトな食感に、スルリと軽快なノド越しも、いかにも「大衆受け」を意識した仕上がり。

具材は、チャーシュー、メンマ、ナルトにネギ、追加の味玉に、主役の大船渡産ワカメ。さて注目のワカメですが、肉厚でプリプリしており塩抜きも万全、実に香り高い、力強い風味の逸品です。ただし惜しむらくは、やはりスープの塩加減で、これが大いにワカメの風味を棄損しておりますな……あと、ワカメももう少し欲しかった。メニュー写真のように、スープ表面が見えなくなるくらいビッシリでも、私としては全くウェルカム。

被災地の復興を約束するような、ワカメの味の力強さ。私も、崩れ去ったあの仕事を、また立て直さなきゃ……もちろん、被災前の形に戻すのではなく、また新たな姿を追い求めて。人も街も仕事も、未来に向けて変わることができるし、変えることができる。そう信じながら、新年を迎えたいと思います。
店舗情報は、こちら。
(*)九十九里産の煮干しは青口と白口に大別され、白口は上品でまろやかな味わい。
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